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日本サッカーの現在とスポーツの未来

第2回:強化、育成、指導のトライアングル
2006年7月
武藤泰明

 ワールドカップ・サッカーでは、日本代表は残念ながら決勝トーナメントにすすめない・・・どころか、勝ち点1、未勝利で大会を終えました。世界の壁は厚いというのが実感で、大会後に発表された国別のランキングでも、算出方法が変更になったせいもありますが、かなり落ちています。JFA(日本サッカー協会)2005年宣言では、2015年までに世界トップ10になることを目標にしています。あと9年。世代交代が2回くらいあるのでしょうか。ということは、現在10代の選手が強くならなければならないということです。

 さて、前回は、サッカーに限らず、世界を目指すスポーツにおいては「頂点が原点である」ことを示しました。レベルの高いトップアスリートやトップチームがまずあり、これを原点として、裾野を広げていくということです。この論理から言えば、サッカーではJリーグもある意味において裾野あるいは底辺なのです。もちろん、一般的な認識では、Jリーグは底辺ではなくて頂点です。というより「底辺かつ頂点」・・・つまり、日本代表から見れば底辺なのですが、日本サッカー全体から見れば頂点であり、そこからまた裾野を広げていくという活動が求められているということなのです。

 裾野を広げる先は、ユースです。ドイツ・ワールドカップまでの日本代表は、いわばこれまでの育成の成果でした。育成が充実していたために、ワールドカップに出場できたのです。これからの代表は、さらに上を目指しています。したがって、ユース育成の意義は、ますます大きなものになるでしょう。

JFAは日本サッカーの強化構想として「三位一体の強化策」を掲げています。ホームページを見ると、この「三位一体の強化策」は、

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 (1)代表強化(2)ユース(若年層)育成(3)指導者養成という3つの部門が同じ知識・情報を持ち、より密接な関係を保ちながら、選手の強化育成と日本サッカーのレベルアップを図るというシステムです。各カテゴリー(各年代)の世界選手権(FIFAワールドカップ・FIFAワールドユース選手権など)で分析・評価・抽出した「日本サッカーの課題」は、その3つの部門を通じ、日本サッカー界全体に展開されています。

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とあります。

 すなわち、ここにおける論理は

  • 頂点の「ゴール」を定める
  • そこにいたるための手段・方法を、同時に明示する
というものです。またこの論理の特徴は、2015年あるいは2050年を目標とする長期計画であるがゆえに、「育成」と「指導者養成」とが、強化とあわせて重視されている点だといえるでしょう。

 そして、この「育成」「指導者養成」を実現する手段が「トレセン制度」です。トレセンはトレーニングセンターの略語が公式用語となっているものです。そもそもは「日本サッカーの強化、発展のため、将来日本代表選手となる優秀な素材を発掘し、良い環境、良い指導を与えること(JFAホームページによる)」を目的に始まったものですが、現在は指導者の育成も大きな役割の一つとして位置づけられています。

 当たり前といえば当たり前なのですが、すぐれた指導者でなければ、選手を発掘・育成することはできません。したがって、日本代表を頂点とし、サッカーの裾野を広げていくためには、指導者の質と量が決定的に重要です。代表が活躍すれば、あるいはJリーグが発展すれば、裾野は急速に広がっていきます。裾野が広がるということは、硬い言い方をするなら、「指導者の要配置数」が増えるということです。ここで粗製濫造をすれば、サッカーに未来はありません。だから指導者育成なのです。

 私がサッカーの仕組みをみていて優れていると感じるのは、指導者にライセンスを付与しているという点です。ライセンスシステムには、多くのメリットがあります。第一は、指導者の質が保たれることであり、根源的なものといえるでしょう。しかし、それだけではありません。第二は、協会が指導者育成計画の目標を立て得るという点です。指導者の需給の実態から考えて、いつまでに、どのレベルの指導者を、何人供給しなければならないかということがわかります。わかるということは、そのためのアクティビティ(指導者育成の実施)が必須になるということであり、育成計画を行動計画と予算計画に展開することが可能になるのです。第三は、たとえば学校の教員やサッカークラブの職員でなくなっても、ライセンスが残るという点です。指導者が必要だと思っている組織は、ライセンス保有者の中から安心して人選することができます。そして第四は、ライセンスが「帰属意識」と「向上のモチベーションや義務感」を生み出すことにより、協会による継続的な教育、情報の伝達と共有が可能になる点です。換言すれば、ライセンスによって、全国の指導者は頂点と繋がっているのです。

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