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第20回 三つの2007年問題−その6
2006年2月
武藤泰明

 個人が職業生活をおくる期間は、以前に比べれば、かなり長くなりました。平均寿命が伸びて、老後も長くなっているのですが、就労期間も伸びています。職業生活は、40年といったところでしょう。年金支給開始年令が引き上げられると、さらに長くなるのだろうと思います。

 これに対して会社の寿命が短くなるとすると、確実に起きてくる変化は、転職の増加です。転職というのでもないかもしれない。勤めていた会社がなくなってしまうので、新しい仕事を探すのですから、転職ではなくて再就職ということになるのでしょう。

 あるいは、M&Aの結果、自分が勤めていた会社が買われて、あるいは合併によって、社名が変わったり、別の会社になったりする。これも転職には該当しないかもしれませんが、会社の文化、自分が属する組織の文化が変わるという点では、転職や再就職に類するものだといえるでしょう。

 このような状況に際して、人材・個人を巡る基本原理は3つあります。

 第一は、能力によって年俸が査定されるということです。社内年功・経験はあまり勘案されません。結果として、賃金体系は非・年功的なものになっていきます。

 第二は、買う側が変われる側より強いということです。買う側になるのか、それとも買われる側になるかというのは会社のお金と意志の問題であって、社員の能力とは無関係なのですが、重要なポストに就くのは買う側の社員や執行役員なので、その配下のマネジャーになる確率は、買う側の社員のほうが高くなるでしょう。

 第三は、第一の点と明らかに矛盾するのですが、買われる側の社員は、「能力によって査定され、年俸とポストが決まる機会」を持ちにくいという点です。買収や合併に際して、変われる側の社員については能力のアセスメントが行われるのが一般的ですが、要職についてはアセスメント以前に人材配置が確定しています。したがって、能力査定の天井は、かなり低いものになるでしょう。ポストの空きがないからです。

 さて、これらの3項は原理であって理念ではありません。換言すれば、一般的な事実ではあるものの、それでよいというわけではないのです。おそらく、能力を有する個人は、その能力を発揮できる会社、能力をもっと伸ばせる会社で働きたいと思うはずです。したがって、買われる側の会社の社員は、上記の原理に基づけば、転職したいと考えるようになるでしょう。

 知識集約化のすすんだ社会では、企業の価値の多くが個人に帰属しています。したがって、買収の結果、買収先の有能な社員が居なくなることは、リストラを必要とするような不振企業を買収する場合は別として、買収が無意味になることと同じです。抜け殻を買ったようなものだということができるでしょう。このような問題を回避するためには、どうしたらよいのでしょうか・・・



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