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第8回 アーキテクチャーとモジュール−(第2回)
2005年2月 
武藤泰明

 前回示したように、企業はビジネスプロセスをモジュール化することによってコスト効率を向上させることができます。今回は、このようなモジュール化の中で、人材にはどのような役割が求められるのかを検討してみましょう。

 モジュール化された組織の中では、仕事(タスク)は、予め定義されています。したがって、人間に求められる作業も定義されたものであり、自由裁量的な部分はありません。作業を覚え、ミスなく効率的に遂行するために必要なのは訓練、およびマニュアルです。

 タスクが予め定義されたものだけであれば、仕事は単純で、面白味もあまりないかもしれません。ファーストフードやコンビニのレジは、これに近いと言えるでしょう。

 しかし実際の仕事は、タスクの定義されたものばかりではありません。とくに、非モジュール的なプロセスをモジュール化することが効率向上の鍵だとすると、この「モジュール化というタスク」に携わる人材が不可欠になります。

 会社レベルでは、組織設計やビジネスプロセスの設計が、この「モジュール化というタスク」に該当します。もちろん、そんな仕事に携わる人はごく少数でしょう。しかしよく見ると、この「モジュール化という仕事」は、小さな組織の中でも、日常的に実施され、企業の効率を改善しているのです。その意味では、組織の中の人材は、モジュール的に活動して効率を実現するのと同時に、モジュール化という仕事−それ自体は効率的なものではありません−によって、間接的に効率の向上に貢献しているのだということができるでしょう。

 モジュールの効率、あるいはモジュール化されたタスクを実行する人材の効率は、測定することができます。これに対して、モジュール化という仕事については、人によって得手不得手があり、しかも測定しにくいものです。またこの仕事に習熟する方法は定義しにくいので、マニュアル型の訓練にも馴染みません。とはいえ、人材がこの仕事を実行してくれるかどうかで、組織の成果は大きく変わります。また人間にとって、定型的な仕事を反復するより、工夫やアイデアを活用して成果を出すことのほうが、仕事の満足度も高いものになるはずです。そしてそうだとすると、組織やタスクの設計に際しては、基本はモジュールによる効率を求めるものの、その中にうまく非モジュール的な要素、あるいはモジュール化という仕事を用意しておくことが重要になるのだと言えるでしょう。



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