第一次ベビーブーム世代の引退が本格化
景気がこんな状態なので最近あまり話題にならないのですが、日本の今後の人材戦略に本質的な問いかけをするのがこの2011年問題です。
第一次ベビーブーム世代が60歳に達し始めることによる、いわゆる2007年問題は、高年齢者雇用促進法によって、いわば先送り(悪い意味ではありません)されたのですが、彼らの雇用延長が終わるのが2011年から。大量の引退が本格化するということです。
会社全体としての職業能力の低下がはじまる
2011年だと、現在のリセッションもうまくいけば底を打ち、回復に向かい始めるタイミングです。つまり、人材需要は旺盛になっているものと思われます。現在削減されているのは非常用労働者が多く、景気回復に伴って、ふたたびその雇用も拡大していくと思われます。しかし、ベテラン社員については必ずしも削減されているわけではなく、制度として引退・減少し、前回指摘したとおり、正社員も構造的に増えません。結果として起きるのは、「会社全体としての職業能力の低下」ということになるのでしょう。
解決策は何か
では、どうすればよいのか。会社にとって合理的な解決策は、次のようなものでしょう。
第一に、仕事全体として、要求される職業能力を下げていくという方法があります。いわゆるデ・スキリング(de-skilling)です。工場で言えば機械化、オフィスならIT化ということになるでしょう。人間の能力に依存する度合いを質・量ともに下げることで、生産性の向上を実現します。
もう一つの方法は、社員の能力を高めるために、教育研修を充実させるというものです。
これらは、どちらか一つを選ぶという性格のものではありません。産業や仕事の性質によって、最適な方法はいろいろなのでしょうが、とくに現在の企業に不足していると思われるのが、二番目の教育研修です。具体的には、つぎの3点が重要なのだろうと思います。
第一は、仕事のスキルを学ばせるという点です。当たり前のようで意外にできていません。OJTでスキルを移転するノウハウが低下したためだろうと思います。第二は、「できることからはじめる」というものです。研修体系が出来上がるのを待つのではなく、必要な教育を迅速に行います。
そして第三は、非正社員の教育の充実です。流動性が高いので教育投資に見合う成果がないのではないかと考える人も多いと思います。しかし、非正社員が携わっている業務は定型的なものが多いので、研修の効率と効果は高いのです。また、研修を通じて非正社員の能力が高まっていくなら、確実に不足する正社員に代替・転換していくことを期待してもよいでしょう。