経営資源「観」の大きな変化
経営資源というと、ヒト、モノ、カネであるというのが一般的な理解だと思います。この中で企業の財務諸表に記載されるのはモノとカネですが、これらの重要度は、なくなってしまったわけではありませんが大きく低下していると言われます。低下しているだけではありません。たとえば、モノについては、それがキャッシュフローを生み出さないなら減損しなければならなくなっています。使わないカネを持っていれば経営が非効率的であると評価されるでしょう。モノとカネが多いことが、優良企業の特徴ではなくなっているのです。そして、これらの有形資産(tangibles)にかわって重視され始めているのが無形資産です。
オフバランス化の進展
では無形資産にはどのようなものがあるのか。確立された定義はないのですが、重要なものを挙げれば
- 無体財産権として法によって守られているもの(特許、商標、意匠など)
- 重要な契約や免許(空港の発着枠、エリアフランチャイジー権など)
- 優位性の固有の源泉(トヨタの生産方式、DELLのビジネスモデル、Googleの利用者数、インターネットショッピングの顧客リストなど)
- 優位性を実現する潜在的な能力(経営者のリーダーシップ、社員の資質やモチベーション、企業イメージ、研究開発実績など)
といったものがあります。どれも財務諸表には記載されません。その意味では、経営資源や資産はオフバランス化が進み始めているということもできるでしょう。
また無形資産は「現在そこにある」ことではなく、収益を「将来において生み出せる」かどうかによってその価値を評価します。この点においても、資産「観」は大きく変わっているのです。
Human Resource Management から Human Capital Managementへ
伝統的な3つの経営資源のうち、モノとカネは会計上の資産でしたが、ヒトはコストでした。しかし上記からも明らかなように、人材を資産と位置づけることが重要になっています。これに伴い、これまで用いられてきた Human Resource Management ではなく、Human Capital Management あるいは Human Asset Management の語が一般的になっています。人材は、マネジメントによってその資産価値を高めることができるのです。