名ばかり管理職問題の本質は
人事管理で2008年前半の大きな話題の一つは「名ばかり管理職」でした。管理職とは文字通り名ばかりで、実態としては指示されて仕事をしている。でも、問題はそのことよりむしろ、第一に時間管理の対象ではないので残業手当もなく長時間働いていること。そして第二に、より深刻な問題は、労働時間の実態を誰も把握していないので、組織としての健康管理ができないという点だと言えるでしょう。
管理職だけではない
このように問題は大きいのですが、名ばかり管理職の議論では、見過ごされている問題が一つあります。それは、管理職ではないのに時間管理の対象になっておらず、名ばかり管理職と同じ問題をはらんでいる社員がかなりいるという点です。会社によって名称はいろいろですが、ここではこのような社員を「名ばかり専門職」と呼ぶことにしましょう。名ばかり管理職と同様、名ばかり専門職の本質的な問題は、命じられて働いているのに時間外手当がつかないこと・・ではなくて、労働時間の実態がわからないという点です。
さらに考えてみると、同様の問題は、若手の社員にもあることがわかります。たとえば、何時間働こうと、残業手当が「定額」の会社。あるいは裁量労働制や一時議論された自己管理型労働制(いわゆるホワイトカラー・エグゼンプション)。これらは社員の労働時間を把握することを部分的にせよやめているので、一種の「確信犯」といえるかもしれません。
とはいえ、裁量労働や自己管理型労働は、社員の自立性の面から言えば進歩でもあります。重要なのは、自己管理・・つまり自立性を重視することと、労働時間の把握によって組織として健康を管理することとが必ずしも両立せず、ともすればトレードオフになってしまうという点です。理想としては、自己管理で健康管理が実現できればよいのですが、そうする社員はすべてではないでしょうし、すべての会社・部署が両立を重視するわけではないでしょう。
部課長を教育し、人事部はスーパーバイザーとしての役割を強める
では、この問題をどう解決すればよいのか。社員個人に対しては、自立性という目標を実現するためには、ある程度裁量に任せることが大原則になるものと思われます。とはいえ一方で役職を問わず勤務実態を把握しておくことも必要でしょう。そしてなるべく少ない時間で仕事を済ませるよう啓蒙していくのが人事部の仕事です。
問題があるのは社員より組織のほうです。会社(人事部)が何を言っても、部課長がそれを無視すれば社員への啓蒙も効果がありません。社員と同程度、あるいはそれ以上に、部課長に対する啓蒙と指導が重要なのです。