学部の偏差値の高い大学に大学院から進学する
マネーロンダリングは、日本語で言えば「資金洗浄」。出処のあやしいお金を複雑に動かして出処をわからなくして、あやしくない資金に換えることを指します。
学歴ロンダリングのほうは、これほど複雑ではありません。大学受験のときに合格できなかった偏差値の高い大学に、大学院から入学することを指します。修士課程を修了すれば、その大学(院)の出身者だという肩書ができる。学部の学歴は使わなくなる・・要は見せなくなるので、ロンダリングという言葉を使います(もちろん学校が正式にこの用語を使っているわけではありません)。このような大学院に合格すれば、学部を卒業した大学よりグレードが上だし、学歴としても学卒より修士のほうが上なので、学生にとっては二重のメリットがあるといえるでしょう。
大学は現在、大学院の拡充を行っています。このため、学部で入学するより、修士で受験したほうが入りやすいところもあります。それなら浪人するより大学院に進学するほうがいいと考える人もいるでしょう。大学のほうも、他の大学で懸命に勉強してきた学生が応募してくれれば大学院のレベルが上がるので歓迎します。
1990年代末から今世紀初頭にかけて、企業が新卒をあまり採用しなかった時代には、就職先が決まらないので大学院に進学するという人も多かったように思います。その際、よりレベルが高い(と世の中で思われている)大学院に進学することで、就職市場における自分の価値を高めておきたいと学生が考えたのが、学歴ロンダリングの始まりだったと言うことができるでしょう。その後就職は売り手市場になり、このような理由で大学院に進学する人は減少しています。一方、企業は人手不足なので修士修了でも学卒と同じように採用しています。それなら2年遅れても入りたい会社に入る、あるいは入社後のメリットを期待して大学院に進学しようという人が増えています。
モチベーションの高い人材が多い?
では、企業はこのような「学部と修士で別の大学を出ている学生」を、どう評価すればいいのか。どちらの大学の出身者だと位置づけるのかというと結構難しくて、結局は「両方」ということになるのでしょう。周囲の学生を見ている範囲で(つまり普遍性はないかもしれませんが)思うのは、他大学から修士に入ってきた学生には、内部進学者より意欲と社会性があるのではないかという点です。彼らは明確な意思を持ち、受験勉強もし、自分の希望する専門に合致する指導教員を選んでいるからです。中高一貫教育では、中学から入って高校に進学する生徒より、高校を受験して入学する生徒のほうが平均学力が一般的に高いのですが、似たようなことが大学院受験についても言えるかもしれません。マネーロンダリングは犯罪ですが、学歴ロンダリングをした学生は、企業から見ると「買い」なのではないかと思います。