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読者が拓く!バスケットボール

第18回:コテコテの韓国プロバスケ(その1)
2008年3月
武藤泰明

Fリーグ開幕戦の緊張

 昨年9月に、フットサルのFリーグがはじまった。開幕戦は代々木第一体育館。昔のオリンピックプールだったところである。

 Fリーグは原則としてホーム・アウェイ方式なのだが、開幕戦は全チームがこの体育館で試合をする。8チームなので2日に分けて、1日2試合ずつの開催である。私が見に行ったのは2日目で、初日は開幕イベントも実施されていたようだが2日目は試合だけで、観客も初日よりちょっと少なくて、ざっと数えた感じでは5〜6000人くらいだったように思う。

 試合が終わったあとに出口に向かって歩いていく途中で、あるクラブの知り合いと一緒になった。 彼いわく「今日の試合は選手が緊張していて、全然動けていませんでしたね」

私「やはり開幕戦だと緊張しますか?」

彼「いや、こんなに大勢のお客さんの前で試合したことがないからですよ」

 体育館といっても、さすがに代々木第一は大きい。たぶん満席なら1万人は超えるんじゃないかと思う。でもサッカーのスタジアムの収容能力に比べると少ない。観客5000人というと、サッカーだとJ2の平均以下になるのだろう。でも、ふだんは代々木第一体育館よりはるかに小さなアリーナで試合をしているチームにとっては、5000人は多い。最近、Fリーグの第一シーズンの入場者数が新聞に出ていたが、1試合平均で2000人未満であった。人が来ないのではなくて、おそらくハコが小さいのだろうと思う。だから観客5000人でも緊張するのだ。

ソウルでのダービーマッチ

 場面は変わって、今年の2月に、ゼミの2年生と一緒にソウルへ合宿に行ったときのことである。合宿と言ってもゼミなので練習や試合をするわけではない。目的は2つあって、第一は、Kリーグ(韓国のプロサッカーリーグ)の人気チームであるFCソウルを訪問すること。第二は、ワールドカップスタジアムとオリンピックスタジアムを比較すること。日韓ワールドカップは2002年でソウルオリンピックは1988年。その間の14年でスタジアムはどう変化したかを見たい、学生に見せたいと思った。

 FCソウルのオフィスがワールドカップスタジアムの中にあるので、先にワールドカップスタジアムを見て、その後、市内の反対側にあるオリンピックスタジアムへ移動。オリンピックスタジアムは1つではなく(何しろオリンピックなので)複数の競技施設が広大な敷地の中にある。その中に、オリンピックでは武道場として使用されていたアリーナがあり、たまたまそこでプロバスケット(KBL) の試合をしているらしいというので行ってみた。

 アリーナの入り口に着くと、チケット売り場らしいテントを片付けている最中である。諦めて帰ろうかと思ったのだけれど、入場券を売っていた中年の女性は、もうすぐ前半が終わるがそれでよければ定価8000ウォン(約960円)の指定席を2000ウォン(約240円)にしてくれるという。

その女性は制服ではないしスーツでもない。そのまま近くの露店で何かを売っていてもおかしくないような格好で、これは日本ではあり得ないなあという違和感と、入場券を売っている人が誰の許可も得ずに、試合が始まった後とはいえ、チケットを値引きしていることにもっと違和感があって、ここでお金を払って、本当に入場できるのか、入場して席があるんだろうかと不安になった。

しかし、学生は2000ウォンなら見たいという。さすがスポーツ科学部である。たぶん、これが文学部や商学部なら、一人ふたり見たいという学生がいても、こんなにマインドが揃うことはないんじゃないか。みんな揃って向こう見ずといえば向こう見ず。というかアバウト。この「勢い」は、まあ大事にしようかと考え直す。ということで、15人で一緒に入った。

こんなに安くしてくれるということは、土曜なのにきっと閑散としているのだろうと思ってアリーナに入ったらそんなことはない。場内は9割がた埋まっていて、たぶん1万人くらい入っている。

 ホームチームはSK Knights。対戦相手の名前はハングル(韓国語)で書いてあったので読めないが、ゼミ生の一人が韓国からの留学生なので、彼に聞いたら相手もソウル市内のチーム。つまりダービーマッチ。だから観客が多い。そしてものすごい熱気なのである。

 驚いたのは、会場のドアを開けて入ったら大音響だったこと。ハーフタイムだと思ったら違う。大音響の中で試合をしているのである。

 これは、まともな競技環境ではないと思った。でも、試合を見ているうちに、考え直すことになったのである(次回に続く)。


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