武藤泰明ホームページ

読者が拓く!バスケットボール

第16回:ホームタウン
2008年1月
武藤泰明

ホームタウンの2つの条件

 スポーツのチームやクラブは、物理的にどこかに存在しているので、ホームタウンがあるのは当たり前のように思える。でも実際はそうでもなくて、ホームタウンのあるチームは意外に少ない。プロ野球やJリーグには、ホームグラウンドがある。bjリーグのチームにもホームがある。プロにはホームタウンという概念があるが、スポーツ全体からみると、これは少数派なのだ。

 では、チームにとって、ホームタウンとは何なのだろう。私がホームタウンの条件だと思っている点は2つあって、第1は、当たり前だと思うかもしれないけれど「競技場があること」。でもそれだけではホームタウンではない。2番目の条件は「その競技場で競技会(試合)を主催すること」である。

 全国レベルの競技会は、トーナメント方式で開催されることが多い。参加するチーム数が多いためである。すなわち、参加チームの試合は、それぞれのチームが持っている体育館やグラウンドで開催されるわけではないのだ。サッカーも天皇杯はトーナメントなので、試合は対戦するチームのホームグラウンドで開催されない。したがって、自前の体育館やグラウンドは、練習や練習試合の場ではあるが、必ずしも公式の競技会の場ではなかった。換言すれば、パフォーマンスを地域住民やファンに見せる場所ではないということである。チームがそこにあって練習をしているだけではホームにならない。ホームになるためには、そこで公式試合が開催されなければならない。そしてそのために不可欠なのが、リーグ戦方式の競技会なのである。

 また、2番目の条件で見逃しがちなのは、「主催する」という点である。つまり、入場料収入を、ホームチームが得るということだ。これがなぜ重要なのかというと、入場料収入を増やすために、チームが努力するからである。結果として、入場者=地元のファン=そのチームを地元のチームと考えてふだんから応援しようという人・・が増えていくことになる。

 もし、入場料はチームには入らず、競技団体の収入になるのだとすると、ホームタウンで試合をするとしても、ホームチームが観客を増やそうという努力は、コストがかかるばかりで見返りがないものになる。それならあまり努力はしないだろう。ファンを獲得するために、入場料をそのチームの収入にすることが必要なのである。

ホームタウンはスポーツによる地域貢献を充実させる

 企業スポーツには、昔から地域の名前を冠したものが多い。バレーボールならニチボー貝塚、バスケットなら日立戸塚。名前からしてホームタウンがありそうだが、実はこれらは、厳密に言えば地域名ではなくて、チームが属している工場の所在地の名前である。だからニチボー貝塚は貝塚工場の所有地に体育館があったはずだし、日立戸塚も同様である。したがって、チームは地域というより、工場にアイデンティティのよりどころを持っていたのである。

 最近は企業スポーツのチームも、会社にとってのチームの存在意義を高めるために、地域貢献活動に力を入れているところが多い。具体的な活動としては、地元のイベントへの参加や、スポーツ教室の開催などである。このような活動によって、そのチームに対して好感や愛着を持つ人は増えるだろう。しかし、地元で競技会が開催されないのだとすると、このような人々が試合を見に行く機会は確保されない。結果として、好感や愛着は、競技に対する「応援」、そしてチームに対する「支持」に結びついていきにくい。これは、ちょっともったいない。地域貢献を効果的なものにするためにも、ホームタウンを持つ―つまり、地元で試合を主催して、地元の人に見に来てもらう―ことが必要なのである。

見せるための体育館

 バスケットボールやバレーボール、あるいは卓球、バドミントンのように、体育館でできる競技は、ホームタウンを持とうというとき、比較的恵まれている。体育館は比較的数が多いからである。自前の体育館がなくても、借りることができるからだ。これに比べると、広い専用グラウンドを必要とする競技では困難がある。例外は野球で、昔から人気のあるスポーツなので、野球場の数が多い。これに対して、サッカーなどフットボール系の競技は試合会場の確保が難しい。とくに天然芝を条件とする競技では、公式試合の会場をふだんの練習に使えないので(そんなことをすれば芝生がなくなってしまう)さらに難易度が高くなる。ホームグラウンドと練習用グラウンドが必要だからである。サッカーは日本が2002年に韓国とワールドカップを共催したのでグラウンドが増えた。しかし、ラグビーやアメリカンフットボールのできる競技場はまだ少ない。

 とはいえ、体育館にも問題がある。それは、多くの体育館が、試合を観戦することを前提として作られていないことである。ホームタウンを持つということは、応援してくれる人を持つ、増やそうと努力するということである。換言すれば「するスポーツ」を、「見せるスポーツ」にもしていくということ。そのためには、見る人のことを考えた体育館でなければならない。


©Copyright Yasuaki Muto. All right reserved.