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読者が拓く!バスケットボール

第13回:OB会をつくろう
2007年10月
武藤泰明

ニュー・スポーツのハンディキャップ

 仕事柄いろいろな大学や企業のスポーツ関係者に会うことがおおいのだけれど、話を聞いていて感じるのは、歴史のあるスポーツはいろいろな面で恵まれているという点である。たとえば野球、ラグビー、スキー、サッカー、ボート。昔から部があれば、OBの中にはコーチになってくれる人がいるし、お金の面でも少しは面倒を見てくれる。運動部だけでなく、長く続いている同好会でも同じである。これに対して、ニュースポーツ・・たとえばラクロス、フットサルだとOBが少ないので、教えてくれる人も少ないし、OB会からの「カンパ」も、そう多くは期待できない。スポーツにも格差があるということだ。

 もちろん、OBがいなくても部活はできる。ウルサイ人がいないほうが気楽でいいとか、あまり口出しされたくないというのもわかる。しかし、うまくつきあえば、OB、そしてOB会はかなり役に立つ存在である。

大学は、実はスポーツに向かない場所である

 じゃあ、OB会はOB自身にとっては役に立たないかというと、そんなことはない。

 高校で部活に入っていても、大学では体育会に入ると講義に出られないから嫌だとか、体育会に呼ばれる・選ばれる水準ではないという人も多い。団体競技だと、自分はうまくても高校のチームが弱いと言うこともあるだろう。たまたま高三の時に故障していて記録がないというのも、個人競技でも団体競技でもありそうだ。そんな人たちも、おそらく体育会とは無縁である。

 別に体育会と無縁でもよい。問題は、そこでスポーツをする習慣がなくなってしまうことである。

 体育会ではなくて、同好会でもスポーツを続けることができる。でも練習場が確保できて、スポーツとしてのレベルもそこそこ、という同好会は限られている。規模の大きい大学だと、同好会でもインターハイ経験者がごろごろいるというところもあるが例外的だといえるだろう。

 つまり、大学と言うのはそれなりに時間がある、時間を作れるところなのだけれど、スポーツを続ける機会は、実は限られている。専門学校に進学したり、就職した人もスポーツの機会が限られるが、大学なら続けられるということではない。とくに最近は、多くの大学で体育が必修ではなくなったこともあって、グラウンドや体育館が近くにない学部も多い。高校は必ず近く敷地の中や近くに体育館と運動場がある。大学はそうでもないのだ。意外に思うかも知れないが、大学はスポーツをする場所としては、決定的に恵まれていないところなのである。

OB会は、なくならない

 ということで、今回のテーマは、同じ高校、あるいは中学のバスケット部出身者で、OB会をつくることである。バスケットボールは、古いスポーツに属する。だから中学のバスケット部も、高校でも、OBの人数は多い。たまに同じ学年で集まってOB会をするというのもあるだろう。そういう一時的なものではなくて、常時存在するOB会をつくってほしい。

 OB会がOBに対してできるのは、スポーツの機会を提供することである。といっても、中学・高校時代のように、毎日スポーツができるのかというとそうはならない。月1回なら多いほうだろう。全員が集まれるかと言うとそれも無理である。みんなそれなりに自分の生活がある。OB会も生活の一部になるのだろうけれど、重要なのは「今の仲間」と一緒にいることのはずなので、昔の部活のようにはいかないのが当たり前なのだ。「忙しいから集まらない」のではなく、「忙しいのに時々集まる」ところに意味がある。そうしなければ、たぶんスポーツと無縁の生活になってしまうはずである。

 OB会の優れたところは、あなたがしばらくスポーツをやめていても、退部させられないところである。いい加減といえばいい加減だが、だからOB会はなくなることはないし、あなたもずっとメンバーでいることができる。

現役と交流(現役に干渉)してはならない

 また意外に思うかもしれないが、OB会で重要なのは、なるべく現役と交流しないことである。顧問の先生に頼まれて誰かがコーチに行くくらいならいいが、やったとしてもその程度であろう。OBが現役の合宿に来るとOBは盛り上がるが現役にとっては邪魔なだけである。交流するなら、自分の学年だけでなくたくさんの学年でOB会を構成して、そこで交流する。そうすれば会員も増えてOB会も活発になる。大学の運動部のOB会は、現役のために存在している。それは、自分たちがスポーツをするための集団ではないのだ。これに対して、中学や高校のOB会は、OB自身のために存在している。

 さて、こんな話は自分には関係ないと、現役の読者は思うかもしれない。でも、もし皆さんが中学生、あるいは高校生だとすると、スポーツする環境は、あと数年のうちにかなり変わる。よりはっきり言えば卒業によって「劣化」する。だからあなたには、OB会員になる資格があるし、そうなることに意味があるのである。

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