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読者が拓く!バスケットボール

第11回:シュートをしよう
2007年8月
武藤泰明

決定力が足りない!

 日本サッカーの大きな課題の一つは、決定力である。つまり、なかなか点が入らない。では、どうすれば点が入るのか。それがわかれば誰も苦労しないのだが、分かっていることの一つは、得点の半分以上が、セットプレー(フリーキックやコーナーキックなど)から生まれているという点である。そう考えると、パスが正確だとか、ドリブルが早いとかいうことは、どうでもいいように思えてくる。実際はそうではなくて、フリーキックやコーナーキックにたどり着くまでのプレーができなければ仕方がない。それにディフェンスもできなければ、点をとってもそれ以上に取られたら終わりである。とはいえ、点をとる人がいなければ、結局は勝てない。パスやドリブル、あるいはディフェンスのうまい人だけではだめなのだということだ。

 新聞などでバスケットボールの試合結果を見ていて思うのは、選手によって得点の多い少ないがかなりあるということである。サッカーは11人、バスケットは5人なので、どちらが「分業」しているかというとサッカーである。しかし5人のバスケットでも全員がオールラウンドプレイヤーということはなくて、役割分担がはっきりしているし、得点力は選手によってかなり違う。これだけを見ていると、シュート力が低くても通用しているように思える。

 大学の体育実技で学生がバスケットをしているのを見ていて、運動部でバスケットボールをしている「部員」と、そうでない学生とは、パスやドリブルを見ているだけでは区別がつかない。ではどこが違うのかというと、終わってみると得点を入れているのは部員なのである。シュートが入る確率が全然違うのだ。もと部員である同僚の教員に言わせると、バスケットボールとは「結局は『玉いれ』なので、入ったか入らなかったかが全てなのです」ということになる。入る確率の高い選手が選抜され、その中で役割分担をしている。シュートは入らないけれど選抜されている選手は、まずいないのだそうだ。

個人競技の集中力

 ゴルフには Driver is show, putt is money という格言がある。300ヤードのティーショットは派手だが、1メートルのパットも1打は1打である。パットが入らなければ勝てない。タイガー・ウッズはドライバーだけでなく、パットの名手でもある。つまり、決定力がある。

 プロゴルファーのバンカーショットの練習は、「何球打つか」ではなく、「何球カップインするか」である。つまり、たとえば20回カップインするまで練習をやめない。

 卓球の場合、トップレベルの選手がボールを打って落下させる場所の面積は5センチ四方くらいが目標になるということである。これがハガキ大になると・・つまり甘くなると反撃される。

 個人競技には役割分担がないので、決定力を持てるのも、持たなければならないのも自分だけである。そのために、ものすごい集中力を発揮しているのだ。

マイケル・ジョーダンとマジック・ジョンソン

 因みにNBAの記録を見ると、歴代総得点ランキングの1位はカリーム・アブドゥール・ジャバーの38387点。1試合平均では24.6点になる。マイケル・ジョーダンは総得点では32292点で3位だが、1試合平均では30.1点で1位である。やはりジョーダンは点を取る人だったということである。

 総得点ランキングを見て意外なのは、マジック・ジョンソンが30位までに入っていないという点である。ジョンソンはポイントガード。いわゆるノー・ルック・パス(パスを出す相手を見ずにパスする)で観客を魅了した。典型的なアシスト型の選手だった。しかし、トリプルダブル(得点、リバウンド、アシスト、スティール、ブロックのうちの3つで2桁を1試合で記録する)の回数は、この記録が採用された1980年代以降の選手の中では、ジョンソンが138回で圧倒的な1位になっている。またジョンソンの1試合平均得点は約20点。フィールドゴール成功率52%、フリースロー成功率85%。つまり、ジョンソンも点を取ったし、シュートの確率も高かったのである。オールラウンドプレイヤーとは、「点取り屋」ではないが得点「も」できる選手なのだということだ。

シュートを練習しよう

 ということで今回の主張は「もっとシュートを」である。

 もちろん、入らないシュートをいくら打っても仕方がない。シュートをするためには、シュートの練習をしなければならない。それも、漫然と練習するのではなく、質の高い練習が必要である。

 では、質の高い練習とはどのようなものなのか。その答えを持っているのは能力の高い指導者である。実業団やプロのチームは、地域貢献を目的として、バスケットボール教室を開催していることが多い。もし身近に指導者がいないなら、このような教室に参加して、シュート練習の方法を教わることである。

 集中力と質の高い練習が決定力を生む。そうすればきっと、もっと勝てるようになる。

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