今回は算数の問題から。
問1:16チームでトーナメント方式の競技会を行うと、試合数はいくつになるか?
答えは15試合。計算方法は16−1=15。考え方としては、優勝するチーム以外は1回負けるとそれで終わりになる。100チームなら99試合である。トーナメント戦というのは「勝ち抜き」なのだけれど、見方を変えると負けを確定させるために競技をしているということになる。数学としては正しいが考え方としてはちょっと面白くない。しかしそれが真実である。
トーナメントは負けると終りなので、サッカーのように得点の少ない競技は、ディフェンスを重視するようになる。1点とられたら終わりかもしれないからである。結果として、守備のすぐれたチームがPK戦で勝ち残る。いわゆるスコアレス・ドロー(0:0の引き分け)が増えて、試合はつまらなくなる。
野球はサッカーより得点が多くなり得る競技だが、それでもバスケットボールに比べれば得点は少ない。重要なのは相手に点をとられないこと。だから、いいピッチャーがいるかどうかで勝負が決まることが多い。
サッカーや野球に比べれば、バスケットボールは「守備偏重」になりにくい競技だということができるだろう。じゃあバスケットボールはトーナメントでいいかというとそうでもないと思う。理由は、参加するチームの半数が、1回しか試合が出来ないからである。つまり、プレイヤーは、試合を1回行い、負けて帰るために競技会に参加することになる。
リーグ戦方式なら、出場するチームの試合数は皆同じになる。そこで
問題2:16チームでリーグ戦(1回総当たり)を行うと、試合数はいくつになるか?
答えは120試合。計算方法は16×(16−1)÷2=120。つまり、16チームの場合、試合数はトーナメント方式の8倍になる。もしこれが8チームだと、トーナメント方式の試合数は8−1=7。リーグ戦方式は8×(8−1)÷2=28。つまり、リーグ戦方式はトーナメント方式の4倍。一般化していうと、何倍になるかは、参加チーム数÷2である。つまり、チーム数が多くなればなるほど、リーグ戦方式の試合数は幾何級数的に増加する。100チームだと、リーグ戦はトーナメント方式の50倍の試合数(4950試合)になる。
この計算が示しているのは、いくらトーナメントでは半数のチームが1回戦で消えると言っても、参加チームが多すぎると、リーグ戦は現実には不可能だということである。夏の高校野球は、予選を含めると4000以上の学校が参加する。だからトーナメントなのである。サッカーの天皇杯も同じことだ。
逆に言えば、リーグ戦方式が成立する条件は、第一に、ある程度チーム数が少ないということである。JリーグはJ1が18チームで、ホーム・アンド・アウェイ・・つまり同じチーム同士が2回対戦するので、リーグ戦の試合数は18×(18−1)÷2×2=306。1チームの試合数は17×2=34である。これ以外にカップ戦もある。リーグ戦で3位になるとシーズン終了後にJ2との入れ替え戦が2試合ある。またワールドカップやアジア選手権など、選手が日本代表に招集される時には試合を開催しにくい。それに毎日できる競技ではないので、リーグ戦34試合というのは、日程的には限界に近い過密度だと言えるだろう。J2は13チームだしカップ戦もないので楽かというとそうでもない。ホーム・アンド・アウェイを2回行うためである。つまり1チームの年間試合数は12×2×2=48。こちらも休みがほとんどない。リーグ戦はチーム数が多いと忙しい。
リーグ戦方式が適切になるもう一つの条件は、チーム間の戦力がある程度拮抗していることである。バスケットボールを例にとれば、1つだけ弱いチームがあって、毎試合相手は100点以上、こっちは20点そこそこだと、みんなちょっと困る。そんな相手と試合をしても面白くないからである。逆に言えば、戦力の拮抗しているチーム同士でリーグ戦をするなら、1回戦敗退もなくなり、試合自体も面白いので、プレイヤーにとってはいいことが多いといえるだろう。
そんな理由で、今回のオススメは、リーグを作ることである。5チームあれば、リーグ戦10試合。1チームあたり4試合になる。この程度なら、土日連続、あるいは日曜2回でリーグ戦を開催することもできるので、忙しい人でも大丈夫だろうと思う。
もし自分たちのチームが弱くて100対20の20のほうだったらどうすればよいか?選択肢は練習するか強化するか、おそらく2つにひとつ。ただし、あまりうまくない仲間を排除するようになっては意味がないので、対策をよく考えておく必要がある。とはいえ、トーナメント方式に比べれば、そんな選手の出番は、リーグ戦のほうが作りやすい。
リーグ戦に名前をつけることも、リーグ方式の楽しみの一つである。サッカーはJリーグで、バスケットボールにはbjリーグがある。イングランドサッカーはプレミアリーグ。自分たちのリーグに名前をつけて、マークもつくる。ユニフォームには、自分たちのチーム名とリーグ名が入る。どんなリーグ名にするか。それを他のチームのメンバーと話し合うというのも、きっと、いいものだと思う。