なぜ公共施設はサービスがよくないのか
スポーツの施設には、県や市町村がつくった公共施設と、民間が独自に建設・運営しているものとがある。私が最近目にした調査結果で面白いと思ったのは、公共と民間では、施設で働いている人の数が明らかに違うという点である。
どちらが多いかというと、意外に思われるかもしれないが民間の施設のほうが多い。公共施設というと非効率で人も多いと考えがちだが逆なのだ。
なぜ民間の施設のほうが人が多いかというと、民間施設は、働いている人が利用する人にサービスをする場所だからである。これに対して、公共施設というのは、人が人にあまりサービスせず、場所を貸している。だから人数が少ない。標語的にいえば、民間は人的サービス、公共は施設サービスということになるだろう。
日本は地価が高い。人が集まりそうな場所ではとりわけ高い。民間の施設はそういう場所にあるので、土地代をまかなうために、同じ面積の土地を使って少しでも売上を増やそうとする。そしてそのために人を雇って利用者にサービスをする。もちろん、サービスをしようとしても利用者が増えないこともある。その場合は赤字になる。競争、勝ち負けがあるということだ。だから必死なのである。これに比べると、公共施設のほうは土地を買うお金や施設の建設費を負担していない場合がほとんどなので、売上を増やさなければならないという切迫感はない。民間に比べれば、のんびりしている。それが悪いというのではなく、そもそもそういうものなのである。
要するに、公共施設とは、場所は貸してくれるがサービスはしないところなのだということである。公共施設に対する典型的な批判は前述した非効率性のほかに「サービスがよくない」というのもあるのだけれど、よくないというより本来あまりサービスをしないのが公共施設だということもできるだろう。
公共施設では、利用者が自分にサービスを提供する
見方を変えるなら、公共施設を利用する時は、利用者は自分で自分にサービスをすることになっているのだということだ。つまり、利用者は公共施設を借りて、自分で民間のスポーツクラブを運営しているようなものなのである。
民間の施設なら、利用者であるあなたが快適に過ごし、満足して帰ってくれるように施設側が努力する。これに対して公共施設では、どれだけ楽しく充実した時間が過ごせるかは、利用者次第だということができる。利用者の創意工夫で全てが決まるのである。
公共施設は一般的に利用料金が低い。だからスポーツをしたい人は使えばいいと思うのだけれど、じゃあ公共施設での楽しみ方を必死に考えている人が多いかというとそうでもなくて、結果として公共施設はあまり人気がない。人気がないのは施設の側のせいでもあるが、利用者が使い方を考えることも重要なのだ。
対戦相手を見つけよう
で、今回のおススメは「ゲームをすること」あるいは「競技会に出ること」。
ほとんどの種目に競技団体がある。そこにチームを登録すると、競技会に出られる。メンバーが五、六人しかいないバスケットボールのチームでも、フルコートで試合ができるのだ。練習だけ、あるいはそれと3オン3をしているのより、たぶん面白い。ゲームが予定されていれば練習する気にもなるだろう。
ただ、登録にはお金がかかるし、競技会の日程と自分たちのチームの都合とがあわない場合もある。だから競技団体への登録とは別に、簡単に対戦相手が見つけられるような仕組みがあることが理想である。
そこで、公共施設へのお願いは、その施設を利用する競技大会を開催して欲しいということ。こう書くと、特定の競技を支援することはできないという返事が来そうである。そうならないためには、競技を特定しないで大会枠の利用者を募集し、応募が多ければ抽選にすればいいかもしれない。1チームでは応募できないので、同じスポーツをしているチームどうしが繋がる契機にもなるだろう。民間のフットサルコートが競技大会を主催する、あるいはゴルフの練習場がプロ選手のレッスン教室を開いているのは利用促進のためだが、結果としてフットサルチームどうし、あるいはゴルフレッスンに通っている人どうしのつながりも生まれ、それがまた利用促進へと循環していく。それなら公共施設の使命にもあっていると思う。
それがだめなら、施設のホームページに「対戦相手求む」の掲示板をつくってほしい。掲示板でのやりとりはすべて公開する。そうすることにより、対戦しようとしている2つのチームのやりとりを第三、第四のチームが見ることになり、自分たちも入れてくれという展開になって、対戦がトーナメント、あるいは総当りのリーグ戦にもなっていくのである。地域活性化って、きっとそういうことなのだ。
これも無理なら、第三は、公共施設のホームページから、利用者が運営する「対戦相手求む掲示板サイト」へのリンクを貼らせてもらえるようにしたい。このサイトは公共施設とは無関係に、勝手に運営されるが、サイトの活動が活発になれば施設の利用促進につながるという点では、施設にとっての「サポーター」の集まりだということができる。
もちろん、地元だけで小さくまとまる必要はない。東京に住んでいる学生のチームが、毎年夏は北海道、冬は石垣島の大会に出場する・・・みたいなことになったら、きっとすごく楽しいんじゃないかなと思うのである。