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第4回:球技大会に観客をよぼう!
2006年12月
武藤泰明

女子高の球技大会を体育祭と間違えて見に行った男子のこと

 私が高校生のころだから昔の話である。35年前。通っていた私立の男子校にやってきた新任の化学の先生は、直前の3月まで女子高に勤めていた。その先生から当時聞いた話なのだけれど、前任の女子高は球技大会をしていた。私のいた高校もそうだったのだけれど、期末試験と終業式の間、先生は採点で忙しいが生徒は暇である。だからクラス対抗の球技大会をする。ウィークデイである。

 球技大会なので体育祭や運動会とは違って、保護者も来賓も来ない。卒業生や他校の生徒も来ない・・・はずなのが、ある年、その女子高の球技大会を、男子生徒のグループが見にきてしまったのだ。

 たぶん、その女子高で球技大会があるというのを誰かから聞いて、球技大会とは体育祭とは違うものだと知らずに、あるいはてっきり体育祭だと思って来てしまったのだ。でも球技大会は球技大会なので、見に来る人がいることを前提としていない。だから学外者は他に誰もいないし、きっとすごく浮いていたんだろうなあと思う。もちろんすぐ退去させられた。ちょっと可哀そうな気が当時もしたし、今でもする。不思議なのは、この男子生徒が通っている学校は休みだったんだろうかということであるが、35年前だし、ここではまあ目をつぶろう。彼らは、見にきたかったのだ。

球技大会を楽しむ

 で、考えてみたいのは、球技大会も学外に開放して、観客を集めてはどうかということである。

 球技大会のいいところは、第一に、準備の必要が少ないという点である。体育祭は開催までに多大なエネルギーを要する。生徒にとっては練習が大変である。これに比べると、球技大会なら日時と出場者を決めれば済む。だから1年1回にしなければならないということもない。試験休み毎に1日を球技大会をしてもよいだろう。

 第二は、自分があまり得意でない競技に出場できるという点である。クラス別の球技大会を例にとると、たとえばバスケットなら、部員は一つのチームで同時にコートにいてよいのは2人までにするというような条件を課される。そうしないと部員どうしの練習試合になってしまうからだ。うまくないバスケット部員より上手な陸上部がいたりするのも面白いところである。

 日本人は「体育嫌いのスポーツ好き」であるとよく言われる。体育の授業は文字通り体育で、球技大会はスポーツである。両者の違いは、球技大会が「試合であること」「うまくなくても構わないこと」である。要は競技を楽しむのが球技大会なのである。

 この球技大会を開放する。見に来るのは「保護者や家族」「その高校を受験しようと思っている中学生や保護者」そして冒頭に示した「他校の生徒」である。ウィークデイは来られない、来にくいということなら土日でもいい。もう少し発想を広げると、近くの別の高校と合同で球技大会をするのも面白いと思う。こうすれば応援も盛り上がる。保護者や卒業生のチームの出場を認めるというのもいい。

 あまり「仕掛け」が大きくなると、教員の負担が増す。期末試験の採点どころではなくなるという心配もある。これを回避するためには、「プログラム・ディレクター(以下PD)」を任命すると良い。PDになるのは、卒業生、保護者など。学校に貢献したい人は、きっと見つかると思う。さらに言えば、学外者や保護者からは、少しでいいので入場料をとる。これをPDへの謝礼や、教員の超過勤務手当に充当するのである。

 といっても、入場料をとるのは、資金が必要だからというだけではない。費用を負担してもらうことによって、来訪者に、球技大会の「当事者」になってもらうことが一番の目的である。つまり、「お金」と「来場したこと」によって、球技大会の開催と運営に協力してもらう。PDは自分の時間を提供し、観戦者はお金を出す。主旨は同じなのである。またしたがって高校生以下は無料でよい。

 で、競技は何がよいか。もちろん複数でよいのだが、プライオリティが一番なのがバスケットボールである。これは、つぎのような論理プロセスから導かれる。

  1. グラウンドの狭い学校も多い。その場合は、体育館でできる競技が良い。
  2. 雨でもできる競技がベストである。これも「体育館」を支持する。
  3. 用具・器材の搬出入や設営に時間がかからない。
  4. 時間で区切ることができる。ハーフ10分なら10分で終わる。延々とラリーが続くかもしれない卓球やバレーボールより時間が読みやすい。
  5. 団体競技である。
  6. 上手くなくても楽しめる。
  7. 危険が少ない。

 以上を満たしている…要は球技大会に最も向いているのがバスケットなのである。そして、このような条件を満たしているために、バスケットの試合には、保護者・家族の参加も可能である。保護者のチームが出場して、親どうしが仲良くなるかもしれないし、それをきっかけにして、親のチームができて、練習までするようになるともっと面白くなる。球技大会を開放しよう。

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