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地域経済の発展に向けて

第11回:福岡経由大分行き
武藤泰明

 この項でも一度示した重要な命題は「交易が地域の発展をもたらす」というものである。大分県の産品(もちろん工業製品を含んでよい)が他の地域に「輸出」されれば、経済は発展する。逆に、大分県に県外からの来訪者が増えれば、これも発展に寄与する。今回考えてみたいのは、大分県への来訪者の増加である。

 大分が来訪者の増加を実現する上でネックになりそうなのが、来訪経路の問題である。ビジネスで来るにせよ観光目的にせよ、大分へは来にくいのだ。

一極集中の福岡、ハブ空港としての羽田

 表は九州各空港の到着便数(2010年4月)を比較したものである。これをみると、いくつかのことに気づく。

 第一に、予想通りと言えば予想どおりだが、福岡の発着便が圧倒的に多い。国内もそうだが、海外(アジア)便については一極集中である。

 第二に、とはいえ、福岡は九州のハブ空港ではない。九州の主要空港で、福岡便が就航しているのは宮崎と鹿児島だけである。

 第三に、九州各空港にとって、ハブ空港になっているのは、羽田と関西三空港(三空港なので厳密に言えばハブではないのだが)である。羽田と関西三空港から九州各空港への就航便の割合は、概ね2対1になっている。つまり、第一のハブ空港は、やはり羽田である。

表「九州主要空港の着便数(2010年4月)」

来訪ルートからわかること

 これをもとにして、九州以外の各地域から、九州各県へのルートを考えてみる。つぎのようなものが考えられる。

 まず、国内からのルートである。

  1. 羽田および関西三空港から各空港へのルート:これは、すべての空港が該当する。ただし、福岡と比べると他の空港の便数は少ない。
  2. 福岡から新幹線:長崎(計画)、熊本、鹿児島が該当する。
  3. 福岡から航空便:宮崎、鹿児島が該当する。

    つぎに、アジアからのルート

  4. 成田、羽田、中部、関空経由:ただし成田便が就航しているのは福岡だけであり、その福岡も1日5便で多いとは言えない。中部と関空については福岡便は16だが鹿児島が7便で大分・長崎・熊本は2便である。
  5. 福岡経由。新幹線または航空便で各県へ:これは、大分以外のすべての空港ないし県が該当する。

    最後に、欧米、大洋州などアジア以外からのルート

  6. 成田、中部、関空経由で各県へ: 4. でみたように成田便は福岡だけで、中部・関空便は福岡、鹿児島以外は少ない、またはゼロである。
  7. 成田、中部、関空から福岡経由で各県へ: 5. と同じである。つまり、大分以外が該当する。

 以上から九州における大分のポジションを整理してみるならつぎのようになるだろう。

 第一に、国内の発地として主要なのは羽田、ついで関西の3空港だが、大分空港への便数は、羽田に特化している北九州を除くと佐賀に次いで2番目に少ない。羽田から大分への旅客数は、2008年に約62万人である。これに対して宮崎は70万人、長崎73万人、熊本92万人、鹿児島115万人、そして福岡が406万人である。

 便数が少なければ旅客数も少ない。これにはニワトリと卵のような関係があるのだろうけれど、便数が多くなれば旅客が増えることも期待できるだろう。本年10月末から、SNA航空が羽田―大分間に3便就航するので、現在の11便から14便に増える。期待はもちろん大きい。

 第二に考えてみたいのは福岡経由である。福岡は羽田46便、関西3空港から18便、アジア各空港から週135便(1日約19便)である。合計すると1日83便、成田便を加えると88便になる。福岡空港経由大分行きというルートの旅客数が増えれば、大分県への来訪者数が増えるだろう。

 しかし、鹿児島、宮崎に福岡便があり、佐賀、長崎、熊本、鹿児島が新幹線で福岡とつながっているのに対して、大分にはどちらもない。福岡から大分への移動手段は、在来線と道路(バス)である。つまり、大分は羽田等の主要空港からの航空便数が少ないので、福岡経由で来訪者を増やす施策をとりたいが、福岡からのアクセスという面でも、他の空港に比べて条件がよくなさそうなのである。

3空港を使えるメリット:分散型の発展

 以上のような検討からは、大分への来訪者の増加を望むのは難しそうに思える。とはいえ、空港、新幹線といったインフラの条件はかわらない。これをハンディキャップと考えなくても済むような施策は、あり得るのだろうか。

 一つの発想は、「大分県は、大分、北九州、福岡という、3つの空港を使える」というものである。つまり、大分はハブとしての羽田からのアクセスが多様なのである。鹿児島、宮崎、熊本、長崎には、これがない。

 とはいえ、福岡空港(ないし博多)、そして北九州空港から大分市内までは遠い。博多から大分市内までのバスは便数も多いが、福岡空港、北九州空港から大分市内へのバスはない。大分市内を目的地とするなら、大分空港を利用するのが合理的なのである。大分市内へ行くのにわざわざ福岡空港や北九州空港を利用することはない。

 さて、ということは、大分県が「福岡空港や北九州空港からあまり遠くない」ことをメリットとして恩恵を受けるためには「両空港からあまり遠くないところに目的地がある」ことが必要になる。言い方を変えるなら、大分、福岡、北九州の各空港の利用者は、大分「県」に行くと言っても、それぞれ目的地が異なるはずである。そしてこのことは、大分県が今後発展するなら、それは一極集中型ではなく、分散型になることを示唆しているように思うのである。

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